誤嚥性肺炎を起こす嚥下障害防止には口腔ケアで常在菌の力を伸ばすこと

高齢者の死因で多い、肺炎は誤嚥性肺炎

高齢者が故の発見の遅れ、風邪かなと思いつつ少しずつ弱っていく

「肺炎」と聞くと、激しく咳込んだり、高熱が出たり、また、濃い痰が多くなって呼吸が苦しくなる、という印象を持っていると思います。

実際の場面に会うことがほとんどないので、知られていないのが、誤嚥性肺炎の症状なんです。

「風邪です」と言われて薬をもらってもなかなか治らない、その後だんだん元気がなくなっていって、よく調べたら誤嚥性肺炎だった、ということもよくある話なんですね。

実際、高齢者の場合、外に出る症状が軽いのにも関わらず、肺炎が進行しているなんてことも結構あるそうです。

とにかく、典型的な症状や自覚症状が出ないこともよくあることなので、発見が遅れることにならないためにも、周りの人がいち早く異常に気付くことが大切なんですね。

誤嚥性肺炎とは

体のはたらきの低下が引き起こす病気

誤嚥性肺炎は、いろいろな条件が重なることで引き起こされますが、知っておかなければならないポイントは次の3点です。

1.嚥下障害を自覚できない

食べ物や唾液、逆流してきた胃液などが気管に入ってしまいます。そして、それを咳によって排出できない状態です。

2.口腔内の菌が侵入する

入ってきた唾液に含まれる菌が、炎症を引き起こすことで肺炎になります。

3.進行が遅い

初めのうちは、自然に治ったりしても、気管壁が弱っていて、再発しやすく、ゆっくり進行するので、風邪などと間違いやすく、手遅れになることもよくあります。

嚥下ミスとは異なる嚥下障害

むせて気管から排出する反射機能も弱くなる

要介護レベルの高齢者になると、体全体の衰えと同時に、嚥下能力、咳き込む力も弱ってきます。

外からわかる症状が軽くても、実は病気が進行していることもあるわけです。病気の進行を表現する力も弱っているわけです。

そのため、いつもと違う変化には常に敏感に反応することが大切なんですね。

1.食事中の症状

食事に時間がかかったり、食べる量が減ったりします。また、食べ物の好みが変わったり、水分を避けたがるようになります。

2.食後の症状

しわがれ声になったり、食後に痰が増えたりします。痰に食べたものが混ざっていたり、口の中に食べたものが残っていたりします。

3.その他

常に喉がゴロゴロと鳴っていたり、濃い痰が出たら要注意です。また、体重が減り、尿が減ったりします。

こういった症状が更にひどくなると、重度の呼吸不全になってしまい、手遅れになります。

おかしいな、と思ったら専門医へ

きちんと検査すれば、早期発見できる

一般の内科では、風邪と間違えて診断されてしまうことがよくあります。特に高齢者では誤嚥性肺炎の可能性を考えて対応する必要があるんですね。

そのためには、専門医による、炎症反応についての検査と胸部レントゲン写真の撮影が必須なんです。

また高齢者の場合は普段の生活で、肺炎とは無関係のような次の症状が見られる場合でも、肺炎の可能性があるので、すぐに検査してもらってください。

・元気がなくなってきた
・食事の時間が長くなってきた
・食後に疲れてぐったりしてしまう
・ぼーっとしていることが多くなった
・失禁するようになった

肺炎から身を守るための知識

誰にでもある肺炎になるリスク

高齢になり、体のはたらきが低下してくるのは自然なことです。そんなときに、長生きを妨げる大きな壁、それが誤嚥性肺炎です。

これは、とても恐い病気なんです。肺炎が死につながるケースはとても多いんです。高齢者の肺炎対策は日常的な健康課題なんですね。

まず、肺炎を引き起こすきっかけとなる、「嚥下障害」と高齢者に多い「誤嚥性肺炎」についての理解を深め、日頃の健康管理をしっかりしましょう。

嚥下障害と誤嚥性肺炎

嚥下障害は年齢とともに起こりやすい

私たちは食物を口から食道へ送るときに嚥下という動作をしています。簡単に言うと、食べ物がきたときに、気管への入り口にふたをするわけです。

この動作は非常に素早く行われるので、ふつうは気管へ物は入らないのですが、そのタイミングがずれると、気管に入ってしまいます。

まあ、通常なら、物が気管に入っても、むせて、奥へ入ることを防ぎます。ところが、高齢になって気管に入った異物を吐き出す力が弱くなると、誤嚥になります。

結果、誤嚥によってものが肺へと到達してしまい、それにより炎症が起きてしまうわけです。
誤嚥にも、自覚のある誤嚥と、寝ているときに起こる無意識の誤嚥があり、肺炎につながるのは後者です。

年齢を重ね、飲み込む力や異物を吐き出す力が衰えてくると、無意識のうちに不顕性誤嚥を繰り返し、どんどん肺炎のリスクが上がっていきます。

早期発見も重要

まわりの人が「食事中のむせこみ」、「常に喉がゴロゴロ鳴っている」、「唾液が飲み込めない」、「食事に時間がかかる」といった、嚥下障害が進んでいないかどうか確かめることが重要ですね。

また、「食欲がない」「元気がない」「脱水症状(舌や皮膚が乾いている)」など、誤嚥性肺炎の症状の特徴が見えたら、すぐに治療に入ることも大切だと思います。

誤嚥性肺炎を予防するために

日頃から誤嚥を防ぐ手立てをする

1.口腔を清潔に保つ

歯磨きやうがいをして、口の中を清潔に保つことで口の中の細菌を減らし、誤嚥性肺炎の大きな原因を取り除くことができます。

適度な湿度と温度の口腔は細菌にとっても居心地のいい場所です。歯磨きやうがいを怠るとすぐに細菌が繁殖するそうです。

そのためには、歯磨きをしっかり行ない、口のなかの細菌を繁殖させないこと、さらに肺へ入れないことが重要なんですね。

2.胃液の逆流を防ぐ

胃液が気管に入ると、気管の壁が冒されて、炎症を起こします、そこへ最近がくると、感染症がにつながります。、

寝たきりの状態は避けたほうがいいでしょう。食後2時間ほどは座って身体を起こしていることで、逆流を防止できるそうです。

3.嚥下を改善する

嚥下の反射をよくする予防薬であるアマンタジンや、咳反射を改善するACE阻害薬などの薬も嚥下障害を改善してくれます。

大きな効果が期待できる口腔ケア

唾液内に含まれる菌が肺炎を引き起こしやすい

気管での細菌感染が起こるのは次のような経過をたどります。

1.呼吸の力が衰える

まず、加齢とともに呼吸が浅くなって、酸素を十分取り込めなくなってきます。

2.抵抗力が弱まる

細胞が弱って、病気に対する抵抗力が低下し、気管や気管支にウイルスや細菌が入ることで起こりやすくなるといわれています。

口腔ケアが気道感染予防に役立つ

要介護レベルの高齢者になると、まわりの人の支援なしでは健康維持は図れません。まず、口腔衛生状態を良好に保つことが重要です。

不顕性誤嚥は生活の質を著しく低下させますが、結果としての肺炎の発症率は、口腔ケアを実施した人と口腔ケアを実施しなかった人を比べると、およそ40%減少させたそうです。

口腔ケアを行わないといけない理由

口の中の常在菌との付き合い方

常在菌というのは、人の体の中や口腔内、皮膚などに住みついている微生物のことを言います。

常在菌が多い順としては、腸、口、鼻、皮膚といった具合です。そのうち、口腔内にいる常在菌の種類は約500~700種類といわれています。

口腔内にはいろいろな細菌がすんでいて、それぞれ集落(フローラ)を形成していています。

たとえば、歯の表面では細菌の固まりがバイオフィルムで覆われているのです。歯と歯 肉の溝には空気を好まない細菌がすんでいます。

また、舌の表面にも別の細菌が多く存在しているのです。頬の粘膜にも多くの細菌が常在しており、バイオフィルムを形成しています。

ふつう、口腔内の多くの細菌は毒性をほとんど持っていないのですが、なかには、状況によって弱毒を持つ場合があります。これが、悪玉菌になります。

そして、歯みがきがしっかりできていない状態で、食べかすがあると、これが細菌の栄養になり、菌の繁殖がすすむわけです。

この繁殖が進んでしまうと、もう唾液の抗菌作用だけではどうにもならず、歯周病やむし歯になるわけです。

むし歯をつくるミュータンス菌

主に親からうつる

ミュータンス菌は、赤ちゃんの頃に、母親、父親、など周囲の人からうつります。そして、常在菌として、住み続けることになります。

じつは、この菌は普段、口腔内が清潔であれば、人に害を与えるような細菌ではないのです。ところが、歯にくっついて増殖する性質があるんですね。

また、糖分が好きで、糖分を栄養にして酸を作り出します。そして、プラークという集落を作って、周りをネバネバにし、歯が定着しやすくするのです。

口腔内に糖分が多いほど、ミュータンス菌が酸が作り、プラークはバイオフィルムというさらにはがれにくいバリアになってしまうのです。

このとき作り出される酸が歯のエナメル質は溶かし、そのうち、穴があき、むし歯はどんどん進行していきます。

細菌はさらにバイオフィルムの中にいるので、強いバリアの中でどんどん増殖して、加速的にむし歯は進行するのです。

P・G菌は歯周病の原因菌

常在菌の代表格ジンジバリス菌

歯周病の原因菌をP・G菌(ジンジバリス菌)といいます。これは、空気を嫌う嫌気菌で、空気に触れるとすぐに死んでしまいます。

しかし、弱い細菌にもかかわらず、プラークやバイオフィルムの中や、歯ぐきの溝、いわゆる歯周ポケットの中に入り込んで、増殖できます。

そしてP・G菌は増殖すると酵素を出します。その酵素が歯を支える歯槽骨を溶かしながら歯周ポケットの奥へ奥へとすみかを増やしていくのです。

この歯周病菌に対して、体の抵抗力があれば、症状は停滞していますが、体の抵抗力が弱まると、歯周病は一気に進行してしまうのです。

常在菌は一度、口腔内に定着すると、完全に無くすというのはできません。したがって、日頃の手入れ、食事習慣、定期検診などでコントロールすることが重要なんです。

高齢者の肺炎の原因菌

口腔内常在菌と誤嚥

高齢者になると、口腔機能が低下します。自浄作用や、唾液の免疫力の低下や清掃能力の低下が起こります。

口腔機能が低下すると常在菌の老廃物が停滞してしまい、環境が汚れていきます。そして、さらに細菌の増殖が起こります。

ただ、これらの細菌も口腔内では病原性を発揮しないのです。口腔から肺組織などに入りこんだときに病原性が発揮されます。

これを「異所性感染」と呼ぶそうです。そして、高齢者で問題となる異所性感染が『誤嚥性肺炎』なんです。

歯周病の原因菌を中心とした嫌気性菌以外の菌も誤嚥性肺炎の原因になるそうです。というのは、もともと口腔内には弱毒性の日和見菌が多く存在します。

これが、不顕性誤嚥によって肺に入り込んでしまうと、肺炎を起こすことになるのです。

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