高齢者のロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイルの違い

目次

ロコモとは一体どういうものか?

ロコモティブシンドロームは介護が必要になる入り口

厚生労働省の実施している国民生活基礎調査では、介護にいたる原因として骨折・転倒や関節疾患などの運動器障害の場合が5人に1人だそうです。

じつは、ロコモは脳卒中で介護状態になるのと同じくらいの率で要介護状態を引き起こしているんですね。

要支援の段階になると、このロコモ状態は当たり前のように進んでいて、、要介護への入口にロコモがあると考えていいわけです。

ロコモのことをもっと知ろう

こんな状態になったらロコモ!

ロコモティブシンドロームは通称ロコモと呼ばれています。正式な和名の名称は「運動器症候群」だそうです。

立つ、歩くなど、「カラダを移動する能力の低下」がはじまった状態のことをいいます。

足や腰などの運動器に障害が生じて、歩く能力が低下してしまうと、要介護になってしまったり、将来要介護になる恐れが高くなるそうです。

筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板などの運動器が体を動かすわけですが、これらに障害が起こって、立つ、歩く、走る、階段の上り下りといった日常生活に支障が出てくるわけです。

ロコモかどうかのチェックポイント

日本整形外科学会の掲げているロコモ診断のチェック項目です。バランスの能力や筋力、歩行能力や持久力をチェックするものです。

1つでも当てはまればロコモの心配があると考えます。

1.片脚立ちで靴下がはけない

2.家のなかでつまずいたり滑ったりする

3.階段を上るのに手すりが必要である

4.横断歩道を青信号で渡りきれない

5.15分ぐらい続けて歩けない

6.2kg程度の買い物(1リットル牛乳2個程度)をして持ち帰るのが困難

7.布団の上げ下ろし、掃除機の使用など家のやや重い仕事が困難

チェックリストでロコモティブシンドロームかなと思ったら、すぐに整形外科医で正しい診断を受け、ロコモ予防や改善にかかル必要があります。

どんなふうにしてろコモになるのか

ロコモになる可能性のある人とは?

次のような状態が日常的に続くと、いずれはロコモ状態に行き着くと考えられるそうです。

1.エレベーターや自動車などの利用による活動量の低下

2.過度なスポーツ、無理な姿勢や使い過ぎによる怪我や障害

3.肥満、痩せすぎ

4.腰や膝などの痛みや不調の放置

5.骨粗鬆症、変形性関節症、変形性脊椎症などの運動器疾患

6.外出機会の低下

ロコモの現状

ロコモティブシンドロームのおそれがある人が40歳以上で4,700万人いるという調査結果があります。

症状別に見ると、
・変形性ひざ関節症:2,530万人
・変形性腰椎症:3,790万人
・骨粗しょう症:1,710万人
などといった具合です。

高齢者だけの問題ではない

ロコモは、高齢者だけでなく、早い人では40歳くらいから始まるといわれています。ということは、高齢者ではないから安心、ということはないわけですね。

誰にでも起こりうるのがロコモです。自分は大丈夫という無用の自信がロコモ予防への取り組みを妨げる最も大きな問題なんですね。

ロコモ予防と改善の方法

適度な運動と健康的な食生活を続けること

ロコモの予防には、何よりも適度な運動です。それと合わせて食生活の改善について、検討することが重要だそうです。

30代や40代といった若年層で介護とは一見無関係のように見える年代でも、じつは、週に2回以上運動をする習慣がないと「将来ロコモになる」リスクが高いそうです。

また、年齢を重ねて、腰痛や膝痛などの悩みを抱えていると、もうすでにロコモ予備軍になっていると考えられます。

ロコモ予防は運動と食事が大切

・筋肉を鍛えるための運動
・筋肉を作るための健康な食生活
この2つは、とても深く関係しているそうです。決まった予防方法があるわけではないわけで、自分で運動習慣と健康的な食生活を想像する以外にはないと言えるんですね。
骨が弱くなるとロコモに近づく
ロコモの要因でとても重要なことのひとつに骨粗しょう症があります。骨粗しょう症は中高年の病気といったイメージをもっている人が多いのではないでしょうか。

しかし、若年層でも生活習慣によってはリスクが高くなってくるのです。やせていて、ダイエットでの食事制限を繰り返すとんでもないことになります。

骨や筋肉の材料となるタンパク質や、骨の形成に役立つビタミンやミネラルが不足してしまうのです。すると、骨粗しょう症に陥る危険度が上昇します。

運動不足も骨粗しょう症の要因

運動は筋肉の大半を占める骨格筋(関節をまたいで骨につく筋肉)を伸縮させます。これが、骨を刺激を与えて強い骨づくりを助けているんですね。

ところが、運動不足になると、筋肉による骨への刺激が足りなくなっていきます。これによって骨が弱くなりやすいわけです。

筋トレは高齢者にも効果

筋肉だけは年齢に関係なく、いくつになっても新陳代謝が活発なんですね。だから誰でも効果が出やすいといわれています。

ロコモ発症の要因となる筋肉、骨、関節の3つの衰えのなかでは、筋肉が一番強化しやすい場所です。

筋肉を構成しているタンパク質は1~2か月で組織の半分が入れ替わると言われています。したがって、衰えた筋肉もトレーニングによって比較的短期間に強化されるわけです。

研究によれば、80歳になってからでも、筋トレで筋力アップを図ることは可能だそうです。

なお、筋肉に限らず、他の運動も継続して行う方が効果が出ます。中でも筋トレは成果が目に見えて出やすいものです。だから、モチベーションを高く保ちやすいんです。

筋肉のはたらきの低下がサルコペニア

歩くのが極端に遅くなってきたらその疑い

サルコペニアというのは、加齢によって骨格筋量が落ちて、骨格筋力が低下していくことを言います。

もちろん、人間は老化によって、骨格筋量は低下していくものですが、それが体力や機能の低下にまで影響するような大幅な低下に行き着きます。

ようするに、筋力低下の視点から身体機能の低下をながめた言葉だといえそうです。

なぜ、筋肉量は減少するのか

サルコペニアのメカニズムとは

サルコペニアという用語は、Irwin Rosenbergという研究者によって生み出された造語です。

ギリシャ語で筋肉を表す「sarx (sarco:サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせた言葉だそうです。

筋肉が減少する仕組み

筋肉の量はが維持されているのは、筋タンパクの合成と分解が繰返し行われるからです。

ところが、筋タンパクの合成に必要な因子の減少や、筋タンパクの分解が筋タンパクの合成を上回ってしまうと、筋肉量の減少が進行するんです。

加齢がすすむと、筋肉の増加に関係する性ホルモンの減少が起こります。また、筋肉を働かすために必要な細胞が死んで行きます。

これをアポトーシスといいます。また、細胞のミトコンドリアの機能障害が起こって筋肉のはたらきが低下します。

さらに、使わない筋肉は廃用萎縮します。栄養不良・癌や糖尿病などの消耗性疾患によっても萎縮して、それらが合わさってサルコペニアを発症するそうです。

複合的要因が重なっていく

脳からの指令を筋肉に伝える働きをする運動神経も次第にはたらきが低下します。また、筋肉の増大に関係するホルモンのはたらきも衰えてサルコペニアが起こります。

さまざまな疾患に罹患することで炎症性サイトカイン(筋萎縮)が多くなって、筋タンパクの分解が進んでしまい、サルコペニアの発症につながっていくそうです。

加齢が原因か、それ以外が原因か

サルコペニアの分類

サルコペニアは、加齢が原因で起こる「一次性サルコペニア」と加齢以外にも原因がある「二次性サルコペニア」とに分類されるそうです。

一次性サルコペニア

加齢以外に明らかな原因がないものです。

二次性サルコペニア

加齢以外で、日常生活動作や疾患、栄養状態によっても起こる場合です。

・寝たきりの生活などで活動性が低下してしまい、筋肉の廃用が起こった場合
・癌や虚血性心不全、末期腎不全、内分泌疾患などの疾患によって起こった場合
・栄養の吸収不良や消化管疾患、薬の副作用による食欲不振でタンパク質の摂取不足による場合

いかにしてサルコペニアを防ぐか

サルコペニアの予防法

サルコペニアに陥らないためには次の5つが重要だと言われています。

1.適度な運動

サルコペニアに効果的とされる下肢の運動と体幹部の筋力トレーニングを日々の運動習慣に取り入れることが重要だそうです。

2.バランスのとれた食事

基本は和食で、主食、主菜、副菜の揃った一汁三菜または一汁二菜でメニューを立てるといいと言われています。

炭水化物、たんぱく質、鉄分、ビタミン・ミネラル、食物繊維などをバランスよく摂ることが重要です。

また、間食でたんぱく質やカルシウムを摂れる乳製品やビタミン・食物繊維を摂れる果物をプラスするのが望ましいそうです。

特に、サルコペニア予防にはたんぱく質が重要で、高齢者で1日75g以上は必要だと言われています。

空腹時の運動では筋肉のたんぱく質合成を促すことができないので、食事後30~60分後に運動を行ってから、一時間以内にアミノ酸を摂取すれば、筋肉でタンパク質が合成されるそうです。

また、運動後に摂るアミノ酸は必須アミノ酸のロイシンが有効だといわれていて、ロイシンを手軽に補給できる栄養補助食品や鮭のおにぎりと豆乳などが有効だと言われています。

3.生活習慣の見直し

睡眠不足、閉じこもり、運動不足、不規則な食生活、強いストレス、喫煙、過度の飲酒などの生活習慣は、活動性の低下や低栄養、生活習慣病につながり、サルコペニアの要因になります。

4.積極的な社会活動への参加

仕事や趣味を持つことはとても大切です。また、地域活動・ボランティアなどに積極的に参加することで他者とのコミュニケーションや社会とのつながりが保たれます。

5.慢性疾患の管理

慢性疾患を管理して悪化を予防します。そうすることで心身の健康維持を図ることが大切だといわれています。

フレイルは「正しく介入すれば戻る」という意味

単なる機能低下というより、そういう状態を表している

日本老年医学会というところが提唱している定義です。

「高齢者が筋力や活動が低下している状態(虚弱)」

これは、高齢者が、意図しない衰弱、筋力の低下、活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下などの脆弱な状態になってしまうことがある、という意味です。

もうダメだ、というのではなく、こんな状態を経て寝たきりや老衰へ向かうから、ここで何とかしよう、という意味合いが強いように思います。

要するに、フレイルの概念を用いると、適切な介入を行えば、再び健常な状態に戻る可能性は十分にある、ということなんですね。

フレイルの状態は対応が急務

健康と要介護の中間状態

フレイルとは、海外で老年医学分野で使っている「Frailty(フレイルティ)」という言葉の日本語訳なんですね。

ただ、「Frailty」をそのまま日本語に訳すと「脆弱」や「老衰」になってしまうので、もう終末イメージが漂ってしまいます。

そこで、日本老年医学会が高齢者において起こりやすい「Frailty」という状態を日本語では「フレイル」と共通した日本語訳にすることを2014年5月に提唱したそうです。

ここには、「正しく介入すれば戻る」という意味があることを強調したかった、という背景があったと言うことです。

フレイルの定義

フレイルは、厚生労働省における定義では次のようになります。
「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」
これは、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味しているそうです。

別の見方をすれば、高齢者の多くは、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えてもいいわけです。

フレイルの症状

フレイルが発症すると、次のような状態が起こってきます。

・体重が減少する
・歩行速度が低下する
・握力が低下する
・疲れやすくなる
・身体の活動レベルが低下する

これら5つの項目のうち、3つが当てはまったらフレイルとみなすように定められているそうです。

フレイルの状態を放置してはいけない

フレイル状態の特徴

フレイルの状態は、まず、身体能力の低下が明らかになってきます。また、さまざまな病気にかかりやすくなり、入院など、ストレスに弱くなってきます。

たとえば、健常な人が風邪をひいたとしても、数日すれば治りますが、フレイルの状態になっているとこじらせて肺炎を発症したり、転倒して骨折をしたりするわけです。

さらに、入院によって環境の変化に対応できず、一時的に痴呆状態が起こったり、感情が不安定になったりします。

転倒による打撲や骨折、病気による入院をきっかけにフレイルからさらに進んで寝たきりになってしまうこともあるわけです。

フレイルが進行すると

加齢に伴う変化や慢性的な疾患によってサルコペニアになってしまいます。筋肉量・筋力の減少によって基礎代謝量が低下して、食欲が低下、低栄養になるんです。

また、サルコペニアによって、活力の低下が起こり、身体機能が低下していくんです。そこへ認知機能の低下など精神的な面の低下が加わります。

そうなると、活動量が低下し、社会的な側面にも障害がおこり、日常生活に重大な支障をきたすようになってしまうわけです。

このまま、日常生活に介護が必要な状態が続くと、ますますエネルギー消費量は低下し、食事量が低下して低栄養となる悪循環を繰り返し、フレイルが進行していくのです。

フレイルサイクルとは

要介護へいたる悪循環

先ほど説明した悪循環こそが、フレイルの怖さなんです。この「フレイルサイクル」にはサルコペニアがあります。

サルコペニアは、筋肉量が減少し、歩行速度が低下しているような状態のことで、フレイルの状態の中でも、筋肉に注目した概念だと言うことです。

サルコペニアについて

サルコペニアには、2種類あって、1つは加齢によるサルコペニア、もう1つは病気に伴って起きるサルコペニアです。

1.加齢や病気で筋肉量が低下しサルコペニアを起こす

すると身体の機能が低下し、足の筋肉量低下により歩行速度が落ちたり、疲れやすくなるため全体の活動量が減少することになります。

2.全体の活動量が減少する

すると、エネルギー消費量が減り、必要とするエネルギー量も減少してしまいます。動かないとお腹が空かないので食欲もなくなっていきます。

3.慢性的な栄養不足になる

加齢によって食事量が低下し、食欲低下も加わって慢性的に栄養不足状態が起こります。この状態が、サルコペニアをさらに進行させ、筋力低下が進みます。

この悪循環を断ち切らなければ、フレイルサイクルをどんどん繰り返してしまい、要介護状態になる可能性が高くなるわけです。

フレイルへの介入方法とは?

フレイルの介入方法には、持病のコントロール、運動療法、栄養療法、感染症の予防などがあります。

1.持病のコントロール

まずは糖尿病などの慢性疾患のコントロールが必要です。持病のコントロールがされていないと高齢の方は体を動かすという気持ちになれません。

2.運動療法と栄養療法

高齢者でも運動療法によって筋力が維持されます。運動療法は個人に合わせておこなう必要があります。

また運動療法は、栄養療法と合わせて行います。低栄養状態で運動を行っても筋肉はつかず、低栄養状態の助長になります。

3.感染症の予防

免疫力の低下によってインフルエンザや肺炎にかかりやすくなります。それをきっかけに重症化して入院、そして寝たきりになってしまうことも多々あります。

日頃から感染症に強い体作りをすると同時にワクチン接種もフレイルを予防する重要な方法だと言われています。

フレイルの進行を防ぐ生活習慣

フレイルの予防の基本は食事と運動ですが、それ以外にも工夫によってフレイルの重症化を防ぐことができるそうです。

1.一人ではなくみんなと食べる

積極的に友人や家族、地域の人などと一緒に食べる機会をつくります。気持ちが変わって、低栄養を防いで心身の健康維持につながります。

2.口腔機能のケア

口腔機能の低下によって、硬い食材が食べられなくなり、むせたりすることが増えます。柔らかいものばかりを食べていると、噛む機能が低下して食事の質が低下します。

定期的に歯科検診を受けて口腔機能の低下を予防し、噛みごたえのある食材を選んで良く噛んで食べることが重要です。

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