はじめに
親が高齢者施設や介護施設に入所すると、実家の整理が必要になる場面が出てきます。住む人がいなくなった家は、放置しておくとさまざまな問題を引き起こす可能性があります。
本記事では、親の入所後に実家の整理が必要な理由と、片付けを先延ばしにした場合に起こる問題について解説します。
親の入所後、実家の整理が必要になる理由
空き家の管理が難しくなる
親が施設に入ると、実家は空き家になります。定期的に掃除や換気をしないと、カビや害虫の発生、建物の劣化が進んでしまいます。管理が行き届かないと、ご近所とのトラブルや防犯上のリスクも高まります。
固定資産税や維持費がかかる
空き家であっても、固定資産税や維持費が発生します。特に「特定空き家」に指定されると税負担が増える可能性があり、早めに整理することが経済的にも有利です。
遺品整理や相続手続きがスムーズになる
親が亡くなった後に遺品整理や相続手続きを行うのは、精神的にも大きな負担です。生前に整理を進めておくことで、相続人間のトラブルを防ぎ、スムーズに手続きを進めることができます。
片付けを先延ばしにすると起こる問題
片付けの負担が増える
時間が経つほど家財が増え、整理にかかる労力も大きくなります。また、どこに何があるか分からなくなると、必要な書類や貴重品の発見が難しくなります。
不要品の処分費用が高くなる
家電や家具など、大型の不要品の処分には費用がかかります。早めにリサイクルショップや寄付などを活用すれば、処分費を抑えることができます。
不動産価値が下がる
長期間放置された家は劣化が進み、売却や賃貸に出す際の価値が下がる可能性があります。早めに整理をしておくことで、活用の選択肢を広げることができます。
片付けを始める前に考えるべきこと
片付けの目的を明確にする
まずは、実家をどうするのか目的をはっきりさせましょう。目的によって片付けの進め方や処分の方法が変わります。
売却
家を売却する場合は、不動産会社と相談し、残すべきものと処分すべきものを整理する必要があります。
賃貸
賃貸に出す場合は、住む人のために不要な家具や荷物を処分し、最低限の状態に整える必要があります。
空き家管理
しばらく空き家として維持する場合は、定期的な清掃や換気、必要な修繕ができるように計画を立てることが大切です。
親や兄弟姉妹との意向のすり合わせ
実家の整理は、自分一人で決められることではない場合が多いです。特に兄弟姉妹がいる場合は、それぞれの意向を確認し、納得のいく形で進めることが大切です。
親の意向を尊重する
施設に入所しても親が判断できる状態であれば、どの荷物を残したいのか意見を聞きましょう。
兄弟姉妹との話し合い
思い出の品や貴重品の扱いを巡ってトラブルにならないよう、事前にルールを決めるとスムーズに進められます。
財産の整理
相続に関係する財産や貴重品については、早めに整理しておくと後々のトラブルを防げます。
片付けのスケジュールを決める
実家の片付けには時間がかかるため、無計画に始めると途中で挫折してしまうこともあります。スケジュールを立てて、計画的に進めましょう。
片付けの期限を決める
売却や賃貸の予定がある場合は、締め切りを意識してスケジュールを作成しましょう。
優先順位を決める
まずは貴重品や重要書類の整理から始め、次に不要な家具や家電の処分を進めると効率的です。
業者の利用を検討する
不用品回収業者や遺品整理業者を活用すると、大量の荷物を短期間で片付けることができます。
具体的な片付けの進め方
親が施設に入所すると、実家に残る荷物の整理が必要になります。どこから手をつけていいのかわからないことも多いですが、計画的に進めればスムーズに片付けることができます。
ここでは、具体的な片付けの進め方をステップごとに解説します。
ステップ1
仕分け（残すもの・処分するもの・譲るもの）
最初に、実家に残された荷物を「残すもの」「処分するもの」「譲るもの」に分ける作業を行います。基準として、
・親が施設で使うもの
・家族が引き継ぎたいもの
・親族や知人に譲れるもの
・不用品（処分・売却・寄付）
などに分類すると、判断しやすくなります。迷うものは「保留ボックス」を作り、一時的に保管しておくのも方法のひとつです。
ステップ2
思い出の品の整理のコツ（親と相談しながら進める方法）
思い出の品は、親が大切にしていることが多いため、できるだけ相談しながら整理を進めるのが理想です。
・写真やアルバムはデジタル化して保存する
・手紙や日記は親の気持ちを確認しながら整理する
・記念品やコレクションは、必要なものだけを残して譲る・保管する
どうしても決められない場合は、親が安心できる形で一部だけ保存し、定期的に見直すのも良い方法です。
ステップ3
不用品の処分方法（リサイクル・寄付・廃棄）
不要になったものは、できるだけリサイクルや寄付を活用し、廃棄物を減らすようにしましょう。
・リサイクルショップやフリマアプリ：ブランド品やまだ使える家具・家電は売却する
・寄付：衣類や本など、必要としている団体へ寄付する
・自治体の粗大ごみ回収：大型ゴミは自治体の回収サービスを利用する
・不用品回収業者：大量に処分する場合は、専門の業者に依頼するのも一案
ステップ4
大きな家具や家電の処理方法
大型の家具や家電は、一般のゴミとして処分できないため、以下の方法を検討しましょう。
・家電リサイクル法に基づく処分：テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどはリサイクル料金を支払い、適切に処分する
・リサイクルショップや買取業者を活用：まだ使えるものは売却を検討
・自治体の回収サービスを利用：自治体ごとのルールを確認して申し込む
・知人や親族に譲る：欲しい人がいれば譲るのも一つの方法
片付けを楽にするためのコツ
ひとりでやらずに家族や専門業者を活用する
実家の片付けは一人で抱え込まず、家族や親族と協力して進めることが重要です。特に、思い出の品を整理する際は、家族で話し合いながら進めると後悔が少なくなります。
また、家具や大量の荷物を処分する場合は、不用品回収業者や遺品整理業者を活用するのも一つの手です。専門業者に依頼することで、短期間で効率的に片付けを進めることができます。
期限を決めて効率的に進める
片付けには終わりが見えないことが多いため、期限を決めて進めることが大切です。「○月○日までにこの部屋を片付ける」といった具体的な目標を設定すると、作業のペースを保ちやすくなります。
また、作業時間を決めるのも効果的です。例えば、「1日3時間まで」と制限をつけることで、精神的な負担を軽減しながら進めることができます。
片付けの負担を軽減する収納・整理術
片付けを効率よく進めるためには、以下のような整理術を活用しましょう。
「いる」「いらない」「保留」に分類する
迷ったものは一時保管し、後日再検討することで判断をスムーズに。
同じ種類のものをまとめる
洋服、本、書類など、カテゴリーごとに整理すると作業がはかどります。
収納グッズを活用する
衣類ケースやファイルボックスを使い、必要なものを見やすく収納。
不要なものはリサイクルや寄付を検討する
捨てることに抵抗がある場合は、リサイクルショップや寄付を活用すると気持ちの負担が軽減されます。
費用と業者活用のポイント
片付けにかかる主な費用
実家の片付けにかかる主な費用には以下のようなものがあります。
不用品回収業者の料金
量や作業内容によりますが、数万円から数十万円かかることが一般的です。
自治体の粗大ごみ処理費
1点あたり数百円～数千円程度。
遺品整理業者の料金
遺品整理を専門とする業者の場合、1Kで5万円～、一軒家では20万円以上かかることも。
ハウスクリーニング費用
片付け後の清掃を依頼する場合、数万円～10万円以上。
不用品回収業者を選ぶ際の注意点
不用品回収業者を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
許可を持っている業者を選ぶ
一般廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者を選びましょう。
見積もりを複数取る
複数の業者に見積もりを依頼し、比較することが大切です。
追加料金の有無を確認
作業後に追加料金を請求されるトラブルを防ぐため、事前に確認しておきましょう。
口コミや評判をチェック
インターネットのレビューや口コミを参考にするのも有効です。
遺品整理業者と不用品回収業者の違い
遺品整理業者
亡くなった方の遺品を整理する専門業者で、形見分けや供養のサービスも提供することが多い。
不用品回収業者
家の不要品を回収・処分する業者で、大量の荷物の処分に適している。
片付け後の実家の活用方法
活用方法
実家の整理が終わった後、家をどのように活用するかを考えます。選択肢としては、以下の3つがあります。
売却する
家を維持するのが難しい場合、売却を検討するのも一つの方法です。
・不動産会社に相談して、適正な価格で売却する。
・リフォームして価値を高める方法もある。
・相続登記を確認し、所有者の名義変更を行う。
賃貸に出す
実家を残したいが空き家にするのは避けたい場合、賃貸に出す方法もあります。
・賃貸管理会社を活用して、空室対策を取る。
・リフォームして貸しやすくする。
・短期賃貸（民泊など）として活用するのも選択肢の一つ。
空き家として管理する
すぐに売却や賃貸をしない場合でも、放置するのは危険です。
・定期的に換気や掃除を行う。
・管理サービスを利用し、定期巡回を依頼する。
・防犯対策を強化し、不法侵入を防ぐ。
空き家を放置するリスクと対策
実家をそのままにしておくと、以下のようなリスクが発生します。
空き家を放置するリスク
固定資産税の負担が増える
管理されていない空き家は税率が上がる可能性がある。
防犯上の問題
空き巣や不法投棄のターゲットになりやすい。
建物の老朽化
メンテナンスしないと劣化が早まる。
空き家対策
・定期管理サービスを利用して、適切に維持管理する。
・近隣住民と連携し、不審者がいないか見守ってもらう。
・売却や活用方法を早めに検討する。
まとめ
親が施設に入所すると、実家の整理や片付けが必要になります。思い出が詰まった家を整理するのは、精神的にも体力的にも負担が大きいものです。今回は、スムーズに整理を進めるためのポイントを紹介します。
実家の整理は計画的に行うことが大切
突然の整理は負担が大きく、後から後悔することもあります。計画的に進めることで、無駄な労力を減らし、スムーズに片付けを終えることができます。
・まずは整理の目的を明確にする（売却するのか、空き家として管理するのかなど）
・片付ける範囲を決め、段階的に進める
・必要な道具（段ボール、ゴミ袋、ラベルなど）を事前に準備
・期限を決めて、スケジュールを立てる
できるだけ親の意向を尊重しつつ進める
家は親が長年暮らしてきた大切な場所です。勝手に処分すると、後々トラブルになることも。親の気持ちを尊重しながら進めましょう。
・可能であれば親と相談し、何を残したいか確認する
・思い出の品は親の気持ちを考えながら慎重に整理する
・親がいない場合でも、親の生活習慣や思い出を尊重する姿勢を持つ
負担を減らすために家族や専門家の力を借りる
実家の整理は、一人で行うには大変な作業です。家族や専門家の力を借りることで、負担を軽減できます。
・家族と役割分担を決め、協力しながら進める
・遺品整理や不用品回収の専門業者を活用する
・価値のある品物は買取業者に査定を依頼する
・必要に応じて行政の支援制度を活用する
実家の整理は、親の意向を尊重しながら計画的に進めることが大切です。また、一人で抱え込まず、家族や専門家の力を借りることでスムーズに進められます。
大切な思い出を大事にしつつ、新たな一歩を踏み出すために、整理を前向きに進めていきましょう。
