昔は、職人に弟子入りして、
いろいろなことを教えてもらう、
というふうな仕組みが当たり前でした。
ただ、入門してすぐに、やり方を教えてくれるのかというと、
そうではなかったようです。
身の回りの世話をし、掃除や片付け、
肝心の技はちっとも教えてもらえない、
というのが当然だったのです。
だから、弟子入りしたものは、
師匠から「盗む」しかなかった。
さまざまな雑事をこなしながら、
技術を盗もうとしても、そんなに
簡単なことではありません。
それでも、必死で努力を続けていると、
だんだんやっていることの意味がわかってくるのです。
そして、その様子をずっと見ていた師匠が、
潮時を見計らって、技術の伝授を始めるというわけです。
時代遅れと言われそうですが、
実はこの過程はとても意味があります。
それは、基礎を身につけるときに、
体にたたき込んでいくということです。
答えを教えてもらうと、わかったつもりになって、
それが身に付く前に、次へ進もうとしてしまいます。
簡単に身につけたことは、苦労して身につけたことに比べて、
軽薄なものになってしまうかもしれません。
基礎を学ぶときに、繰り返しを大切にし続けると、
そのうち、ことの本質が理解できるようになるわけです。
見かけだけの理解では、答えは知っていても、
なぜそうなるのか、というところで
力不足になってしまうのですね。