ぼくは、40年間中学校の教師をしてきました。
初めの頃は、1学級45人の生徒がいて、
黒板に書いた内容を生徒に伝えるのが
精一杯でした。
そのうち、クラスの人数は40人に減り、
生徒数によっては、30人を切るような
状態も経験しました。
生徒数が少なくなると、
一人ひとりの状態がよくわかります。
ここで、気がついたことがあるんですね。
それは、一人ひとりの状態がわかったからといって
生徒の学力を伸ばしやすくなる、ということは
あまりない、ということです。
いくら、一生懸命教えて、
場合によっては、テストに出るという
情報も伝えて、授業で全く同じ問題をやったとしても、
点をとれる生徒は限られている、ということです。
はっきり言ってしまうと、
とても残酷な言い方になりますが、
勉強に向いてない子とか、
今やっている学習内容を受け入れる
気持ちそのものが芽生えない子とか
なんと言ったらいいのでしょうか。
一つ例を挙げるとすれば、
脳が興味を持てない、のです。
点数を取るための、
道のりに関心を持つことができないのですね。
だから、生徒数が少なくなって、
教えやすくなったと言えば、
微妙で、できないということが
よりはっきりと見えてしまったということなんですね。
じゃあ、勉強ができない子が
社会に出たら活躍できないのか、っていうと
また、別物なんですね。
要するに、向いていることをやれば
どの子も、いろんな能力を発揮します。
しかし、今の教育は、一律に学力を伸ばし、
社会に役立つ知識を埋め込むので、
拒絶反応を起こす子がかなり出てきます。
じゃあ、そうすればいいのか。
一つの答えが学歴ですね。
勉強の出来不出来はともかく、
学歴は一つの武器になります。
でも、大学を出た人なんて、
ゴロゴロいます。
では、何をどうすればいいのか。
残念ですが、今の学校には
その答えを示すことは
なかなかできないかもしれないです。
学校に行けるようになった歴史。
しかし、学校に通えなくなる子が
生まれるという現実。
学力の格差をなくすことが
本当に一人一人の人生にプラスになるのか、
最後まで、疑問は止めないまま、教師生活を終えました。